活動地「珠洲」について
能登半島の先端に位置する石川県珠洲市は、三方を海で囲まれ、海上交通が盛んな時代は、大陸との交流や北前船の寄港地として栄えました。人口1万2千人と本州で最小の市でありながら、世界農業遺産にも認定される豊かな里山里海の風景・文化を持ち、そこでの暮らしは私たちに多くの示唆を与えてくれます。
2つの顔をもつ海
Photo: Kichiro Okamura
荒々しい波と岩場の続く外浦と、穏やかな波の砂浜が広がる内浦の対照的な2つの海をもち、美しい海岸線と、切り立った山が海へ落ちる里山里海の風景で形成されています。
里山里海の食文化
海の幸と山の幸の両方が採れる食材の宝庫。旬によって食材は様々。のどぐろやあんこう、タコといった魚だけでなく、あわびやサザエの貝類、わかめや昆布の海藻も多く採れます。魚醬「いしる」を使ったいしる鍋や海藻のしゃぶしゃぶ、精進料理の「くずきり」が有名です。
市内には主に3つの酒蔵があり、日本酒だけでなく焼酎といった地酒の生産も盛んです。
発酵食や能登杜氏、ヨバレといった独特な食文化があります。
数多あるお祭り
毎年秋になると、ほぼ毎日どこかの集落でお祭りが催されています。中でもキリコ灯籠、燈籠山、曳山は特に有名で、地区によってその特色は異なります。大きいもので高さ約15m以上のキリコもあります。2015年には日本遺産に認定されています。
お祭りのときは各家々で食事を振舞う「ヨバレ」の風習があり、里山里海の食材を輪島塗の御膳で親戚・友人・知人に振舞います。
揚げ浜式製塩の様子
受け継がれる伝統
ユネスコ無形文化遺産に登録されている、田畑を司る神々を家へお連れし豊作を祈る「あえのこと」といった農耕儀礼が今なお受け継がれています。
釉薬を使わない黒灰色の焼き物「珠洲焼」は室町時代に廃絶し、その後、約400年間姿を消していた中世を代表する焼き物です。地域の人々によって1978年に再興されました。花器や酒器、椀物など食卓を彩る器として親しまれています。
伝統産業のひとつである塩づくりは、海水を汲み上げる「揚げ浜式」の製塩方法で行われ、消滅の危機に瀕しながらも守り受け継がれています。